SECRET ROOM

第0049回 (2005/01/21)
007


門を過ぎ前庭に滑り込むタクシー、途端に執事の様を呈した男達が近寄って来る。「お待ちしておりました」「サロンになさいますか、それともテラスがよろしいでしょうか」アペリティフの事だ。午後7時だがまだ陽は昼のように明るい、我々はテラスを希望した。この判断は正しかった。1872年Mrs.POMMERYによって建てられたシャトーの中を通り抜け、反対側に広がる広大な庭園を眺めるテラス席に出る。周りの客たちは貴族や実業家らしき人物達だ。このテラスの先にあるゴルフコースと見まごうばかりの芝生はヘリコプターで食事にやって来る人たちのものだ。シャンパンを飲みながら至福の一時を過ごす。徐々に夕暮れに照らされていくシャンパングラスが宝石のような輝きを見せる。この時私の頭の中では「007」のテーマが鳴り響いていた。
いよいよメインダイニングへと案内されるのだが、そこは正に貴族の城の一室だった。(そのような場には必ずと言って良い程大きく古いタペストリーと日本の陶器が飾られている)
一皿目:鱸を網脂で包みそれをちりめんキャベツで包んだものとキャビアを浮かべたホワイトソース。
二皿目:青オマールの一皿。シンプルだが焼加減が絶妙だ。
三皿目:ミルクラムの玉ねぎ丸ごと添え。(玉ねぎが器仕立てになっていて中にスープが入っている)
デザートになってシェフがやって来た。驚いた事にその彼は長崎生まれの日本人でこのレ
ストランで働くようになって13年になる方だった。彼のご好意でちり一つ無い光り輝く厨
房や地下のセラーなど見る機会を頂く事ができた。メニューブックも頂きこのレストラン
での感激はパリの三ツ星P・Gでの食事の数倍大きかった。
このシャンパンの故郷には、3世紀にローマ人が造ったセラーを現在も当たり前に使ってい
るシャトーがある。
こんな事が当たり前に毎日繰り返されている。歴史が根っから違うんだぞ!って事を思い
知らされる時心地よい風が心に吹く。自分の仕事の何たるか、自分の国の何たるか、自分
の故郷の何たるかを考える。
今年もこんな思いや経験を積む旅に4人の仲間が旅立つ。彼らの中で起きる事が仕事でも
起きる事を期待しながら見送ろう。

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